2019.07.01 19:40 | 海外
先日の記事では2020年東京オリンピックの出場国がどのように決まっていくか、その流れや関連する大会について紹介した。
今回は、オリンピック最終予選に進むための大会の一つであり、先日6月30日に幕を閉じた第1回FIH・プロリーグを紹介する。
FIH・プロリーグ(以下、プロリーグ)は国際ホッケー連盟(FIH)主催の2019年からはじまった新しい国際大会。これまで開催されてきたチャンピオンズトロフィー、ワールドリーグ・セミファイナル、ワールドリーグ・ファイナルに代わる大会としてスタートした。
プロリーグは2019年以降、毎年行われる予定で下記の男女9カ国が出場国として名を連ねた。
※1:イギリスはイングランドの世界ランキングを表記
※2:パキスタンは“inevitable circumstances”(避けられない状況)により2019年レギュラーシーズン最初の3試合に出場できないとFIHに申し出た。それを受けてFIHがパキスタンに対して出場停止処分を下したため、第1回大会は男子8カ国で開催することになった。(FIHの発表はこちら)
※3:イギリスはイングランドの世界ランキングを表記
プロリーグ出場国は単純に世界ランキングで上位から順に選ばれたわけではなく、それぞれの国の下記項目なども考慮して選出された。
・放送、メディアの報道力
・財務面での持続性
・商業的ビジョン
・法的コンプライアンス
・開催予定地
・国際的な大会経験やプレゼンテーション
・組織や人材
・マーケティング戦略
・モチベーションとレガシー
・チームパフォーマンスの歴史
・大会開催の経験値
(残念ながら日本は選出されなかった)
なお、上記の出場国は最低4年間、プロリーグへの出場権が保証されている。
このプロリーグの特徴はホームとアウェーで試合が行われる点だ。
今回の第1回大会レギュラーシーズンは2019年1月から6月までの半年間にわたり開催され、男女合わせて計144試合ものホーム&アウェーゲームが実施された。
このレギュラーシーズンで男女それぞれ上位4位に入った国がグランド・ファイナルに進出した。
長距離移動が頻繁に発生するスケジュールであり、遠征に耐え得る「タフさ」も試されたレギュラーシーズン。
ホーム、アウェイにかかわらず、試合に勝利すると勝ち点3が与えられ、引き分けとなった際は試合後、シュートアウト戦が行われ、シュートアウト戦で勝ったチームに勝ち点2、負けたチームに勝ち点1が与えられるルールで実施された。
最終順位は勝ち点の合計で決まった。
(勝ち点が並んだ場合は、勝利数、得失点差、得点数、直接対決の結果、フィールドゴール数の順で、それぞれの数字が多い国が上位となるルール)
男子の順位は以下の通りだった。
順位 | 国 | 試合数 | 勝ち点 | 勝 | SO勝 | SO負 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | オーストラリア | 14 | 32 | 10 | 0 | 2 | 2 | 40 | 26 | 14 |
2 | ベルギー | 14 | 28 | 8 | 1 | 2 | 3 | 52 | 29 | 23 |
3 | オランダ | 14 | 23 | 5 | 3 | 2 | 4 | 37 | 32 | 5 |
4 | イギリス | 14 | 22 | 6 | 1 | 2 | 5 | 35 | 31 | 4 |
5 | アルゼンチン | 14 | 22 | 6 | 1 | 1 | 5 | 31 | 36 | -5 |
6 | ドイツ | 14 | 20 | 4 | 3 | 1 | 5 | 30 | 38 | -8 |
7 | スペイン | 14 | 16 | 2 | 5 | 0 | 7 | 33 | 45 | -12 |
8 | ニュージーランド | 14 | 4 | 0 | 0 | 4 | 10 | 26 | 47 | -21 |
男子は世界ランキング1位のオーストラリアが10勝し、レギュラーシーズンを1位通過。
2018年W杯を制した“世界王者”ベルギーは世界ランキング通りの実力を見せ、2位。
上位4カ国がグランド・ファイナルに進出する大会形式ということもあり、4位に入れるかどうかの争いが白熱。
3~6位は僅差で4カ国が争ったが、2017年欧州選手権王者で2018W杯準優勝のオランダが3位に食い込んだ。
イギリスは田中健太選手と同じHGCでプレーしていたアシュリー・ジャクソン選手がリーグ終盤で代表に復帰。その効果もあったのか、ホッケーの母国の意地を見せ、4位に滑り込んだ。
▲アシュリー・ジャクソン選手
リオ五輪金メダルのアルゼンチンは5位となり、グランド・ファイナル進出ならず。
北京、ロンドンと金メダルを獲得し、リオ五輪では銅メダルを獲得したドイツは6位に終わり、スペイン、ニュージーランドと続いた。
女子レギュラーシーズンの順位は以下の通りとなった。
順位 | 国 | 試合数 | 勝ち点 | 勝 | SO勝 | SO負 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | オランダ | 16 | 45 | 15 | 0 | 0 | 1 | 41 | 10 | 31 |
2 | アルゼンチン | 16 | 38 | 10 | 4 | 0 | 2 | 31 | 15 | 16 |
3 | オーストラリア | 16 | 30 | 9 | 1 | 1 | 5 | 35 | 23 | 12 |
4 | ドイツ | 16 | 29 | 9 | 0 | 2 | 5 | 34 | 24 | 10 |
5 | ベルギー | 16 | 21 | 6 | 1 | 1 | 8 | 21 | 27 | -6 |
6 | ニュージーランド | 16 | 18 | 6 | 0 | 0 | 10 | 29 | 32 | -3 |
7 | 中国 | 16 | 14 | 4 | 0 | 2 | 10 | 27 | 40 | -13 |
8 | イギリス | 16 | 14 | 3 | 2 | 1 | 10 | 22 | 37 | -15 |
9 | アメリカ | 16 | 7 | 1 | 1 | 2 | 12 | 15 | 47 | -32 |
世界ランキング1位のオランダが16試合で15勝1敗という圧倒的な強さを見せ、1位でホーム開催のグランド・ファイナル進出を決めた。
リオ五輪で男子アルゼンチン代表を金メダルに導いたカルロス・レテグィ監督が率いるアルゼンチンが2位。
▲カルロス・レテグィ監督
シドニー五輪以降、五輪でメダル獲得がないオーストラリアが3位に入り、リオ五輪銅メダルのドイツが4位でグランド・ファイナル進出。
ここ数年で世界ランキングを着実にあげているベルギーが5位。
反対にランキングを落としているニュージーランド、中国は6,7位で、リオ五輪で金メダル獲得のイギリスは8位に終わった。
北米で唯一出場したアメリカは1勝3分けで最下位だった。
▲ニュージーランドのオリビア選手がレギュラーシーズンの得点王(15ゴール)に輝いた。