2025.06.03 21:45 | 日本代表
これまでのさくらジャパンは、どちらかというと個々の能力を優先してきた戦い方をしてきた印象があります。だからこそポテンシャルを感じました。個々の能力を生かした中で、さらに組織として戦えるチームにしていく。男子で採用されているような高度な戦術を取り入れていくことは、僕が今回、男子から女子の代表に移ってきたメリット、強みだと思っています。いかに女子にも戦術を落とし込むか。しっかりボールをつないで組織的かつ攻撃的なアタッキングホッケーを実現したい。ワクワクし、なおかつ、しっかり結果も残す。そういうホッケーを目指しています。選考会を経て準備期間も限られていたので、ネーションズカップで結果として表れたということはないのですが、選手の考え方とかは変わってきています。
すごくポジティブな点は、4月に始まった日本リーグを見ても、しっかりボールをつないで攻撃をしていこうという意思が見えるチームが増えてきたという印象は受けています。今まではどちらかというとリスクを排除して、危なかったらもう外へ切ったり、しっかり守ってカウンター、というチームが多かったのが、今年を見ていると、学生チームも含めてしっかりつないで攻撃していこう、ということが増えた印象です。その辺の情報発信はしていて、オンラインでの説明会などもやって、僕はこういうふうに、こういうホッケーを目指します、といろんな場所で話してきました。選手へのプレゼンテーションだけでなく、都道府県協会のトップの方を集め、さくら、サムライのヘッドコーチが全国の関係者の方に現状や、どこを目指して、どういうふうに進んでいくのか、お話しをさせてもらいました。これまで望んでいたような結果が出なくて、ここで脱却したいという思いが、日本中にあるのではないかと感じています。
一つは、意外とベーシックなところができているようで、できていない。練習でもずっとディテールと言っています。何となくボールを止めて、ボールを打っているというか。ボールを止めるっていうことがどういうことなのか、ボールを打つことがどういうことなのか、もう本当に細かい技術、プッシュ、あるいはレシーブといった一つ一つのスキルの中でも、いろんな種類があるんですよ。
これはもう本当に問題提起になるのですが、国内の育成年代でちゃんと指導されてない部分があると思っています。世界と日本のレベルの差というか、僕は指導者のレベルの差がすごく大きいと思います。日本全体のコーチングのレベルがまだまだ世界に追いついてないから、選手が追いつけてないというところを感じています。
さくらジャパンの候補選手の中でも初めてそういうスキルを聞きましたとか、なんとなく知っていたけど、こういう名称がついているみたいなのことを知らなかった選手もいます。僕は国際ホッケー連盟の指導者ライセンスを持っていて、教本みたいなものには、スティックの握り方だけで20ページくらいあるんですよ。Vグリップ、パンケーキグリップとか、たくさんある。本当に技術が細分化されています。世界トップのオランダの人で東京オリンピック男子ヘッドコーチだったシギ・アイクマンさんがずっと言っていたのは、本来であれば小中学生で指導するレベルのことが、日本はちゃんと指導されていないので、それを代表チームでやらなければいけないということ。アイクマンさんに教わった日本の選手たちが指導の現場に行って、今の選手たちに落とし込む作業をしてくれているので、レベルは上がっていると思います。ただ、まだまだそこからやらなきゃいけないところがあるし、それをやることは、日本ホッケーが壁を越えていける一つだと思っています。