【連載インタビューvol.1】女子ホッケー日本代表さくらジャパン高橋章HC「いまの日本の女子ホッケーなら必ず壁をこえていける」

2025.06.03 21:45 | 日本代表

メダルを獲得できるチームへ

―高橋さんには、戦術面の引き出しの多さなどが期待されていると思います。自身のタイプや指導者像はどのように考えていますか。

 自信は持っていますが、今の自分がパーフェクトだとは全く思っていません。コーチ歴は何十年もありますが、若い指導者から学ぶこともたくさんあって、他の競技団体の方から学ぶこともあるし、小学生を教えている方からも学ぶことがあって、そういうメンタリティーでいられるっていうことが僕の強みなのかなと思います。長くやっていると、自分はこういうスタイルだとか、ポリシーがあって変えられないものはあるのですが、まだまだ進化しなきゃいけないっていう思いはあります。選手が変わればやり方も変わるし、目標設定が変わればアプローチの仕方も変わる。一つの方法だけにこだわっていては、今のアスリートたちに対して十分なコーチングは出来ないという気持ちが強く、それが僕のスタイルです。

ネーションズカップでの高橋HC 写真=本人提供

―変えられないもの、信念みたいなものはどんなものでしょうか。

 コーチングの根本にあるのは『アスリート中心』で、それをサポートする立場だという考え方です。そこの考え方とか選手の接し方みたいなのは、絶対に曲げられないというか、変えられないところではあります。あとは強い組織をつくる。ただ仲が良くてみんな楽しくOK、というのではなくて、強い組織、勝てる組織をつくるという点において、そこへの厳しさみたいなのは絶対に曲げられない。和して同せず、とよく言われますが、楽しいだけではなく、時には厳しいことも言わなくてはいけない。今はオリンピックでメダルを獲得するという目標に向かって、チームが一つになるというか、同じベクトルで向かっていくことを優先できる選手。例えば、ポテンシャルが高くて能力が高くても、チームとして行動できない、プレーできない選手はチームには絶対入れないっていうところは曲げられません。チームとして機能しなければ意味がない。団体スポーツなので大事なのは、目標はみんな同じだよね、というところです。一番の目標であるチームとして、オリンピックでメダルを獲得すること、そこさえぶれなければ、同じ方向を向くことは絶対に可能だと思っているので、そういうところにすごく時間は費やします。

―ロス五輪でメダル獲得という最大の目標があって、来年のアジア大会で大陸王者になれば、五輪への近道になりそうです。この3年のビジョンは。

 2028年までの強化プランは日本協会にも示しており、今年に関しては、今の僕がやろうとしているホッケーを実現できる選手の育成・発掘。あとは戦術、そのための技術をレベルアップさせながら、自分たちの戦い方をうまく選手に落とし込んでいく。選手たちも今までやったことのない戦術、プレーのコンセプトを理解してくれ、データも提示し、それを固めていくという作業を今年、来年しっかりやっていきます。その中で当然、来年はワールドカップ、アジア大会もあります。近年は国内で合宿をするよりは、その予算を使って海外に行って試合をするっていう方法をとっていく方もいましたが、今に関しては、海外に行くよりも、国内でしっかりと合宿をやらせてくださいという話を協会に伝えています。国内合宿をやる中で、技術のレベルアップ、戦術の落とし込みをやっていく。チームのベースの部分を作るというのが、今年、来年。来年のネーションズカップ、あるいは再来年のネーションズカップに優勝して、プロリーグに出ていく、そこでヨーロッパのチームとの対戦を経験していくことが、メダルを獲得できるチームに成長していくために思い描いているプランです。

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