【コラム】藤本一平の越境ホッケープレイヤー欧州観戦記 Part.2~日本とオランダ、ドイツ、フランスを比べて感じたこと「パフォーマンス面」~

2018.09.30

ホッケー強豪国オランダ(世界ランキング女子1位、男子4位)とドイツ(女子5位、男子6位)の国内リーグを観戦した藤本一平氏によるコラム「越境ホッケープレイヤー欧州観戦記」。
全4部の構成で、第1部では今回の旅程の概要。ドイツリーグの選手間の競争の激しさなどを掲載した。

第2部では日本とオランダ、ドイツ、フランスを比べて感じたこと「パフォーマンス面」について。
日本のホッケーや海外選手についても熟知している藤本氏の分析が光る。

藤本一平Ippei Fujimoto

1989年3月27日、山梨県生まれ。天理高校では同級生の田中健太(日本代表)に誘われホッケー部に入部。早稲田大学に進学し、関東春季リーグ優勝や大学王座準優勝に貢献。4年生では主将を務める。大学卒業後は名古屋フラーテルホッケーチーム(現ベルテクスホッケーチーム)に所属し、社会人選手権4度の優勝や高円宮牌男子ホッケー日本リーグ3度の優勝を勝ち取る。大学在学時にU21日本代表に選出され、ジュニアワールドカップに出場。シニア代表選手としてアジア大会やワールドリーグセミファイナルに出場した。CAP数59。2017年シーズンをもって現役選手を引退。情報発信にも長け、ホッケーファンの間では長年、藤本氏のブログが愛読されている。

オランダリーグ、ひと際輝く「ホッケー界のクリスティアーノ・ロナウドとメッシ」

率直に言うと、オランダリーグの試合はレベルが高かった。強く速く正確で、それが試合を続けて継続される、という印象でした。

ケンタが所属するHGCには今年から2人のスター選手が加入しています。1人は元イングランド代表のアシュリー・ジャクソン選手(以下、アッシュ)。もうひとりはオランダ代表キャプテンを務めるセビ・ヴァン・アス選手(以下、セビ)。この2人を「ホッケー界のクリスティアーノ・ロナウド」「ホッケー界のメッシ」と形容したらちょっと大げさ過ぎますかね。

アッシュはかつて私の個人ブログでも取り上げた選手です。ドラッグ・フリックの名手で、フィールドプレーでもドリブル、パスともに能力が高い。ポジションはMF。すこし「やんちゃそうな雰囲気」も持つ選手です。長髪だったり、坊主だったり、髪型がコロコロ変わる選手で、現在は短く丸刈りにしていました。アイスホッケーも上手な31歳。

セビはアッシュに比べると真面目そうな雰囲気。個人的にメッシのようにキレのあるドリブルをする選手と感じていて、そのことをケンタに話すと「セビはメッシが大好き。練習ではスポンサーから支給されている練習着を着るのが普通だが、セビはバルセロナのユニホームを着て練習したりするくらい」と教えてくれました。彼もポジョションはMFでドリブル、パスともに一級品。特に懐の広い「左抜き」は観ていてため息が出るほど美しい。ショウゴも興奮気味に「セビの左抜きは見たことないレベル」と話していました。26歳という若さ。ホッケー選手としてのキャリアとは別に、バイク(スクーター)会社の起業に携わっており、最近起業記念パーティーを開いたそうです。

HGCのキャプテン、セビ選手と田中健太選手Almere戦勝利後。写真/藤本一平

HGCのキャプテン、セビ選手と田中健太選手Almere戦勝利後。写真/藤本一平

この2人が中盤を支配するHGC。このチームがもし日本リーグでプレーしたら・・・。高い確率でトップに立つのではないか、と感じました。パスのテンポ、プレス、球際の激しさ。絶対に勝つというマインド。今回、HGCが対戦したPinokeとAlmereは1部の下位チームということもあり、HGCのペースで試合が進みましたが、どちらも決してレベルが低いわけではなく、HGCが強かった、という印象を受けました。

特にAlmere戦ではHGCの攻撃陣は難しいパスでもレシーブミスがほとんどなく、一方のAlmereはレシーブミスが目立ち、そこに大きな差を感じました。

しかし、上には上がいます。強い、と感じたこのHGCであっても、7試合を終えて現在リーグ5位。(2018年9月23日時点)

首位から6位までを順に書くと、
Bloemendaal(19)
Kampon(15)
Amsterdam(15)
Oranje-Rood(14)
HGC(13)
Rotterdam(13)
となります。カッコ内は勝ち点。

ここでは細かく触れませんがHGCより上にいる上位4チームにもオランダ代表だけでなく、ベルギー、ドイツ、オーストラリア、アルゼンチンなどホッケー強豪国の代表トップクラスの選手が多く所属しています。Bloemendaalが頭1つ抜けていますが、勝ち点の差はそれほど大きく離れておらず、力が拮抗しているリーグと言えるでしょう。

やはり強豪国のオランダ。勝利への強い意地

HGCでのケンタは左FWのスタメン選手として出場し、出場時間も長かったため、「FWのレギュラー選手としてプレーしていて、コーチからも評価されているのだな」と感じました。

私が渡欧する1週間前のリーグ5戦目でフーフトクラッセでの初ゴールを決めていましたが、私が観戦したリーグ6戦目(対Pinoke)でもダイレクトヒットシュートを見事に決め、リーグ2得点目をあげて勝利に貢献していました。ケンタの武器であるスピードに乗ったドリブル(コーチやサポーター陣もケンタの特徴として口にしていた)とシュート力は、今回観戦した2試合でも光っていましたが、本人は自分のプレーに納得していない部分がまだまだありそうな様子。今後、レベルの高い環境でさらにトレーニングを積み、経験も重ね、上位チームと対戦しても活躍してくれることを心から期待したいと思います。

Almere戦の田中健太選手。写真/藤本一平

Almere戦の田中健太選手。写真/藤本一平

ケンタいわく、「オランダに来て感じたのは勝ちに対する意識の強さ。練習でも勝ちにこだわる姿勢が強く、3-0で勝っていたらミニゲームであっても時間稼ぎをする」とのこと。私の記憶では自身の現役時代にミニゲームをしていたとき、もちろん勝ちたいと思って強い気持ちでプレーしていましたが、勝つための時間稼ぎのプレーは公式戦以外はあまりなかったように思います。

またオランダやドイツ、ベルギーのリーグでプレーする選手のインスタグラムなどを見ていると、日頃の練習でミニゲームに勝ったチームが集合写真を撮り、「勝ったぜ!」的な内容の投稿をしているものをよく目にします。ケンタの話を聞いたときに、こういった類の写真を投稿するという行為が、「勝利」に対する貪欲さを表しているのかな、と思い起こされたのでした。

ドイツ・ブンデスリーガ、ロンドン五輪金メダリストのウェスリーを観戦

ドイツでの観戦に関しては、1部リーグの残留争いをしているチーム同士の対戦ということもあり、オランダの試合に比べるとレベルは低く感じました。日本リーグで上位に入るチームであれば、十分勝機があるのではないだろうか、というレベルでした。

赤いユニフォームを着たDusseldorfer HC の選手たち。9月22日(土)16:30~ Nurnberger HTC 戦。写真/藤本一平

赤いユニフォームを着たDusseldorfer HC の選手たち。9月22日(土)16:30~ Nurnberger HTC 戦。写真/藤本一平

試合自体は5-6でニュルンベルクが勝利。注目していたウェイ選手はペナルティーコーナーのドラッグフリックを含む合計3得点と活躍していましたが、さらに目立ったのはニュルンベルクのクリストファー・ウェスリー選手(以下、ウェスリー)でした。

彼はドイツ代表がロンドン五輪金メダル、リオ五輪銅メダルを獲得したときの中心選手で、すでにピークは過ぎていますが、いまでも試合における存在感は別格でした。もともとは中盤の選手ですがこの試合はフルバックで出場。フルバックといえども、ドリブルするときは前向きにグイグイ進むし、オーバーラップもガンガンしていました。

一緒に見ていたショウゴ、ヒロキとも話していましたがこの試合はウェスリー選手が「キング」でした。190cmを越える長身選手でありながら繊細なドリブルスキルを持ち、体もうまく使ってボールキープをする。アシスト、あるいはアシストのアシストなどゴールが生まれる前には彼を経由してボールがつながっている場面が多く、「勝ち」につながるプレーができる選手だな、と。

ニュルンベルクのキング、クリストファー・ウェスリー選手(31)と藤本氏。写真/藤本一平

ニュルンベルクのキング、クリストファー・ウェスリー選手(31)と藤本氏。写真/藤本一平

ただオランダのHGCのアッシュやセビに比べて、ウェスリーにはそこまでの運動量はなく、年齢的な問題などもあると思いますが、DF時の戻り足の意識などは低かったです。また、ウェスリーとともにプレーする選手たちはまだ経験の少ない選手が多いようで、試合中にもウェスリーがコーチのような立場で選手を指導?しているような場面も見受けられました。この試合に関しては2人の審判のアンパイアリングにミスが目立ち、選手たちも観客たちも残念な気持ちになる笛がけっこうありました。

オランダのゲームでは激しいタックルがあったとき、日本では吹かれるかなと思うタイミングでも笛が鳴らずにプレーが続行される場面が多くあり、プレーが途切れないので個人的には見ていて楽しめました。
この笛は選手を育てることにも繋がっているように感じられました。

まとめ

ざっくばらんに書いてきましたがまとめてみると。

「パフォーマンス面」での日本、オランダ、ドイツの比較では

・HGCの2戦は攻守ともにレベルが高く、非常に質の高い(スピード感ある激しい)ゲームが展開されており、オランダリーグ全体のレベルの高さが感じられました。
・ドイツの1部下位同士の対戦は、HGCの試合と比べるとスピード感、運動量、個々のスキル、チーム戦術などがやや劣り、日本のトップチームであれば勝機が十分にあるレベルだと思いました。と同時にドイツ1部の上位チームの試合も観てみたいと感じました。

以上です。

以前、立命館大学の男子ホッケー部のみなさんがオランダの強豪クラブ、ロッテルダムに遠征に行っていた記憶がありますが、そのようなクラブ同士の国際戦も観たいですね。(サッカーで言うところのクラブワールドカップ的な大会がホッケーにもあれば…)

それでは第2部はこのあたりで。

次回の第3部では、日本とオランダ、ドイツ、フランスの「環境面」を比べながら、オランダのリーグがなぜここまで強いのか、などについても自分なりの考えを書いていきたいと思います。

◆第3部 日本とオランダ、ドイツ、フランスの「環境面」へ続く。