【コラム】藤本一平の越境ホッケープレイヤー欧州観戦記 Part.2~日本とオランダ、ドイツ、フランスを比べて感じたこと「パフォーマンス面」~

2018.09.30 16:00

やはり強豪国のオランダ。勝利への強い意地

HGCでのケンタは左FWのスタメン選手として出場し、出場時間も長かったため、「FWのレギュラー選手としてプレーしていて、コーチからも評価されているのだな」と感じました。

私が渡欧する1週間前のリーグ5戦目でフーフトクラッセでの初ゴールを決めていましたが、私が観戦したリーグ6戦目(対Pinoke)でもダイレクトヒットシュートを見事に決め、リーグ2得点目をあげて勝利に貢献していました。ケンタの武器であるスピードに乗ったドリブル(コーチやサポーター陣もケンタの特徴として口にしていた)とシュート力は、今回観戦した2試合でも光っていましたが、本人は自分のプレーに納得していない部分がまだまだありそうな様子。今後、レベルの高い環境でさらにトレーニングを積み、経験も重ね、上位チームと対戦しても活躍してくれることを心から期待したいと思います。

Almere戦の田中健太選手。写真/藤本一平

Almere戦の田中健太選手。写真/藤本一平

ケンタいわく、「オランダに来て感じたのは勝ちに対する意識の強さ。練習でも勝ちにこだわる姿勢が強く、3-0で勝っていたらミニゲームであっても時間稼ぎをする」とのこと。私の記憶では自身の現役時代にミニゲームをしていたとき、もちろん勝ちたいと思って強い気持ちでプレーしていましたが、勝つための時間稼ぎのプレーは公式戦以外はあまりなかったように思います。

またオランダやドイツ、ベルギーのリーグでプレーする選手のインスタグラムなどを見ていると、日頃の練習でミニゲームに勝ったチームが集合写真を撮り、「勝ったぜ!」的な内容の投稿をしているものをよく目にします。ケンタの話を聞いたときに、こういった類の写真を投稿するという行為が、「勝利」に対する貪欲さを表しているのかな、と思い起こされたのでした。

ドイツ・ブンデスリーガ、ロンドン五輪金メダリストのウェスリーを観戦

ドイツでの観戦に関しては、1部リーグの残留争いをしているチーム同士の対戦ということもあり、オランダの試合に比べるとレベルは低く感じました。日本リーグで上位に入るチームであれば、十分勝機があるのではないだろうか、というレベルでした。

赤いユニフォームを着たDusseldorfer HC の選手たち。9月22日(土)16:30~ Nurnberger HTC 戦。写真/藤本一平

赤いユニフォームを着たDusseldorfer HC の選手たち。9月22日(土)16:30~ Nurnberger HTC 戦。写真/藤本一平

試合自体は5-6でニュルンベルクが勝利。注目していたウェイ選手はペナルティーコーナーのドラッグフリックを含む合計3得点と活躍していましたが、さらに目立ったのはニュルンベルクのクリストファー・ウェスリー選手(以下、ウェスリー)でした。

彼はドイツ代表がロンドン五輪金メダル、リオ五輪銅メダルを獲得したときの中心選手で、すでにピークは過ぎていますが、いまでも試合における存在感は別格でした。もともとは中盤の選手ですがこの試合はフルバックで出場。フルバックといえども、ドリブルするときは前向きにグイグイ進むし、オーバーラップもガンガンしていました。

一緒に見ていたショウゴ、ヒロキとも話していましたがこの試合はウェスリー選手が「キング」でした。190cmを越える長身選手でありながら繊細なドリブルスキルを持ち、体もうまく使ってボールキープをする。アシスト、あるいはアシストのアシストなどゴールが生まれる前には彼を経由してボールがつながっている場面が多く、「勝ち」につながるプレーができる選手だな、と。

ニュルンベルクのキング、クリストファー・ウェスリー選手(31)と藤本氏。写真/藤本一平

ニュルンベルクのキング、クリストファー・ウェスリー選手(31)と藤本氏。写真/藤本一平

ただオランダのHGCのアッシュやセビに比べて、ウェスリーにはそこまでの運動量はなく、年齢的な問題などもあると思いますが、DF時の戻り足の意識などは低かったです。また、ウェスリーとともにプレーする選手たちはまだ経験の少ない選手が多いようで、試合中にもウェスリーがコーチのような立場で選手を指導?しているような場面も見受けられました。この試合に関しては2人の審判のアンパイアリングにミスが目立ち、選手たちも観客たちも残念な気持ちになる笛がけっこうありました。

オランダのゲームでは激しいタックルがあったとき、日本では吹かれるかなと思うタイミングでも笛が鳴らずにプレーが続行される場面が多くあり、プレーが途切れないので個人的には見ていて楽しめました。
この笛は選手を育てることにも繋がっているように感じられました。

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