【コラム】男子ホッケー日本代表主将・山下学 ドイツへ渡る 第3回

2021.01.20 15:00 | 海外

チームメイトは医療関係者

いよいよ開幕。初戦は中位のクレーフェルダー(Crefelder)と対戦し、1対3で敗れたものの「内容は悪くなかった」(山下)。つづく2戦目は強豪ケルン(Rot-Weiss Köln)を相手に前半を0-0で折り返した。終盤に崩れて0対3で敗戦したが、この試合まではチームとして「良いイメージで」試合を展開できていた。

しかし、3戦目以降、いくつかの問題発生により、ニュルンベルガーのチーム状況は悪化する。

1つは中盤の軸だった選手が靭帯の怪我により、離脱。もう1つは若手選手がパーティーに参加してコロナ陽性となり出場停止処分を受けた。さらに、内科医や歯科医など医療従事者の選手3名がコロナから身を守るために試合出場を自粛。

これらの影響で大幅な戦力ダウンを強いられたチームはその後、3戦目に引き分けたのち3連敗。開幕から6試合で1分5敗と厳しい状況に立たされた。

レフトバックでプレー

チームが苦しい状況の中で山下はどうだったのか。山下は日本代表ではDFの中央を守るポジション「スイーパー」としてプレーすることが多い。しかし、ニュルンベルガーでは左サイドを守る「レフトバック」を任された。

ニュルンベルガーが攻撃を組み立てる際に、もともとレフトバックでプレーしていた選手は相手チームからのプレスの標的になることが多く、安定感に欠けていた。そこに経験豊富な山下が配置され、その選手はライトバックにコンバートされた。

ドイツ人選手はパワーに優れ、長い手足を活かしたプレーも得意だ。日本人選手とは異なるプレースタイルだが、日本代表キャップ186の国際経験豊富な山下はすぐに順応し、「攻撃の組み立てのときは比較的あせらずに対応できた。シンプルにプレーすればパスはつながる」と手応えを感じながら出場を重ねていった。

ウーレンホルスターHCと対戦/提供=山下学

感じた課題

手応えを感じた一方で、もちろん課題も出た。「ドリブルで長く持つと引っかけられる。特にケルンなど上位チームのFWはハードワーカー。自分がフォアでボールを持って優位に立っていれば打開したり、交わしたりできたが、弱い持ち方だと奪われる。相手がボールを持った時はこちらが守備でガッツリ当たっても、体をうまく活かしてボールを隠しながらドリブルされたり、力強いスティックワークをされたりして、奪えないときがあった。ドイツ代表のエース、クリストファー・ルアー(Christopher Rühr/ケルン)は特に印象に残った」とリオ五輪銅メダル国の実力を肌で感じた。

▼「ドイツ代表のエース」クリストファー・ルアー

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待望の初勝利

7戦目。勝利をつかめず苦しんできたニュルンベルガーは下位チームの一つ、TSVマンハイムとの試合を1対0で制し、待望の中盤戦初勝利をあげた。

▼TSVマンハイム戦のフルマッチ映像(山下は背番号32)

助っ人は金メダリスト

しかし、その後の3試合は1分2敗。予定していた最終試合はコロナの影響で実施できず、4月からの後半戦に延期の見込みとなった。

山下が参戦した中盤戦、ニュルンベルガーは10試合で1勝2分7敗。前半戦と中盤戦の合計21試合では2勝5分14敗で12チーム11位という苦しい位置につけている。

渡独前に「チームを2部に落とさないようにしたい」と語っていた山下にとって、中盤戦を11位という順位で終えたことは満足できない結果に違いないが、多くの主力選手が怪我やコロナの影響で離脱し、戦力ダウンが著しく、不運な部分はあったと言えるだろう。

選手の離脱が多かったからこそ得られた経験もあった。昨年、第一線でのプレーから退き、ニュルンベルガーのセカンドチーム所属の元ドイツ代表MF、クリストファー・ウェスリー(Christopher Wesley =33/ロンドン五輪金メダリスト)が1試合限定で助っ人出場。

「(最盛期と比べると)だいぶ太っていたし、体は動かなくなっていたけどやっぱり球際のボールコントロールはうまかった」(山下)と語り、金メダリストとチームメイトとしてプレーするという貴重な場に立てた。

▼ニュルンベルガーの公式Instagram

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ドイツでの生活

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