【コラム】男子ホッケー日本代表主将・山下学 ドイツへ渡る 第3回

2021.01.20 15:00 | 海外

ドイツでの生活

チームメイトとのコミュニケーションは英語だが、山下以外は全員がドイツ人のチームであったため、ミーティングではドイツ語の資料が使用されることもあった。

言葉の壁もホッケーという共有言語があったから乗り越えられた/提供=山下学

以前経験したオーストラリアリーグ参戦時はホームステイだったため、食糧は容易に手に入ったが今回はチームメイトとともに4人でシェアハウスに居住。

部屋は1人1部屋ずつあったが、シャワーやキッチンは共用で、食事は自炊。ドイツのスーパーには「日本にあるような惣菜はほとんどなく、自分自身で栄養バランスを考え、肉や野菜、パスタなどを調理」。68kgあった体重が2kg減り、良い意味で身体がしぼれてプレーにキレが増した。

ドイツの人工芝はすべりやすいピッチが多かった/提供=山下学

コロナの影響でチームメイトと飲食をともにする機会は多くはなかったが、感染対策をしたうえでチームディナーが実施されたこともあった。豚の肩肉や白くて小さい「ニュルンベルクソーセージ」などを堪能し、クリスマスシーズンによく食べられる「ジンジャークッキー」をプレゼントでもらうなどドイツの文化に触れることができた。

豚の肩肉/提供=山下学

2021年

10月下旬までの日程を戦い抜き、11月初旬に日本に帰国した山下。富山の自宅での2週間の自主隔離を経て、岐阜での日本代表合宿に参加した。

帰国時の航空機内でも感染対策/提供=山下学

12月には所属クラブ、小矢部RED OXの一員として高円宮牌ホッケー日本リーグの最終節にも出場した。ドイツからの移動、自主隔離、合宿を経ての試合ということもあり、体調面での不安を抱えながらではあったが「来年につながる試合をしよう」という想いで臨み、自分にできる精一杯のプレーをした。また、地元富山のプロスポーツチームとともに地元を盛り上げるためのクラウドファンディングの発起人にも名を連ねたり、メディア出演をしたり、ホッケーの普及活動にも積極的に参加した。

▼所属クラブのInstagram投稿

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2021年

激動の2020年を終え、そして、迎えた新たな年。仕切り直しのオリンピックイヤー。あらためて2021年の抱負を聞いた。

「去年はコロナの影響が多くあり、これまで合宿ができること、ホッケーができることが当たり前ではないことを感じた1年だった。色んな人が動いてくれたおかげで合宿やドイツへの挑戦もできた。今年も、この状況のなかでやれること、日本代表合宿で体力、技術、チーム力を上げていきたい。五輪でメダルを取り、応援してくれる人たちに感謝の気持ちを込めて恩返しをしたい。ホッケースクールなどを開催して、ホッケーファンを増やしたり、ホッケーをやる人も増やしていきたい。笑って終われる年にしたい」

持ってる男

DFというポジションはFWの得点数のように数字で評価するのは簡単ではない。インターセプトの回数、ボール奪取率、攻撃組み立て時のパス成功率。細かく分析すれば数値化できるものはもちろんあるが、ぱっと見ただけでは評価がむずかしいポジションと言えるだろう。

今回、山下がドイツリーグ参戦で残した実績は1部11位のチームで、レフトバックのポジションを勝ち取り、10試合に出場。五輪金メダリストを含む、世界トップレベルを知る選手たちとガチンコ勝負も経験した。2018年、男子日本代表サムライジャパンのキャプテンとして、チームを史上初のアジア大会初優勝に導いた「持ってる男」は、ただでさえハードルが高い海外挑戦をこのコロナ禍で実現させた。

この経験が山下をどう変えたか。2021年はどんな「持ってる」エピソードを披露してくれるか。山下にとってあらためて真価が問われる一年。初詣のおみくじは「大吉」。はたして。

(文・藤本一平)

山下学のプロフィール

2019年8月の五輪テスト大会でプレーする山下選手 写真=金子周平/マイホッケー

日本国内では「マナブ」、海外クラブでプレーした際はチームメイトやサポーターたちから「ヤマ」の愛称で呼ばれた。好きなお寿司のネタは「えんがわ」。

【山下学のSNS】
Instagram:https://www.instagram.com/yamashita0204/
Twitter:https://twitter.com/yamashita0204

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