2018.10.05 17:30
まず、クラブには子供から老人まで幅広い層の人々が会費を払って会員として所属しています。参考までにドイツのデュッセルドルファーは年間800ユーロ(日本円で約10万円)、フランスのスタッドフランセーズでは年間366ユーロ(日本円で約4万8千円)の会費がかかるそうで、この額はクラブによって異ります。トップ選手であれば期間限定で移籍することもありますが、基本的には子どものころからずっと同じクラブに所属し、子どもから大人まで、同じチーム名で、同じユニフォームを着て、年齢や競技レベルによってプレーするカテゴリーを分けていることが多いようです。
子どもからお年寄りまで、多様な年齢層の人々が構成する組織体系によって、クラブに所属する人同士の距離は非常に近く、まさにファミリーといった感じ。各クラブにはホッケーピッチの横にクラブハウスがあり、そこでは食事やお酒を楽しめる環境がありました。試合を観たあと、すぐにサポータたちはクラブハウスに入って飲食しながら会話を楽しんでおり、クーリングダウンを終えた選手たちも順にクラブハウスの飲食スペースにやってきて、食事を取りながら、家族やサポーターたちとコミュニケーションを取っていました。
旅程1(オランダ・HGC vs Pinoke)の試合前、Pinokeのグラウンドに到着したあと、「ケンタを応援にきたんだ」とHGCのサポーターやスタッフに挨拶すると非常にフレンドリーに応対してくれて、ヘッドコーチのポール・ヴァン・アスさんは「試合が終わったら、またクラブハウスで話そう」と声をかけてくれました。また、私の顔を観て日本人とわかったのか「あなたはケンタのファミリーかい?」と声をかけてくれたHGCサポーターも何人かいたし、ハーフタイムには「私の子どもがケンタと一緒にプレーしているわ」と声をかけてくれた夫婦もいました。
旅程3(オランダ・HGC vs Almere)の試合前にHGC関係者と再び顔を合わせたときは、笑顔で迎え入れてくれました。後述しますが(Part.4に掲載)、ケンタについてどう思うか、インタビューに協力してくれた方もいたし、試合後にショウゴとヒロキと私の3人がクラブハウスでケンタのクーリングダウンが終わるのを待っていると、HGCのサポーターが「こっちにおいでよ」と声をかけに来てくれて、オランダ名物のコロッケをシェアしてくれました。
余談になりますが、対戦相手だったPinokeにはニュージーランド代表のマルクス・チャイルド選手がおり、彼とは旧知の中だったので試合後のクラブハウスで話をしていました。すると彼の家族もニュージーランドから応援に来ていて家族を紹介してくれました。その後、マルクスはシャワーを浴びに行き、私はケンタがクーリングダウンや着替えを終えてクラブハウスにやってくるまでの間、すこし手持ち無沙汰になって1人で待っていました。
すると、チャイルド父が「ここに座りなよ」と言って、家族の輪に入れてくれていろいろと話をしました。その後、シャワーを浴びて戻ってきたマルクスは私に「なにか飲むかい?」とバーカウンターに連れて行ってくれてビールをおごってくれたのでした。
マルクスの兄で、ニュージーランド代表の名FW、サイモン・チャイルド選手は私と同い年で、2009年のジュニアW杯や2015年のワールドリーグセミファイナルで対戦したことがあります。2009年の大会では同じホテルに宿泊しており、大会MVPとなった彼の部屋を日本代表の仲間と一緒に突撃訪問し、ユニフォームやジャージの交換をしてもらったのです。そのとき彼は非常にフレンドリーに接してくれていまでも濃い記憶が残っているのですが、チャイルド父にその話をすると、「2009年はわたしも観に行ったよ。4位というニュージーランドのジュニア代表史上、最高成績だった。いまサイモンはニュージーランドにいて、オペ(手術)を受けたあとだからプレーしていないが、私としては2020年の東京五輪にサイモン、マルクス一緒に出てほしいと思っている」と言っていました。「ぜひまた東京で会いましょう」そんな話をしました。
以前からマルクスと旧知の仲だったこともありますが、試合後、グラウンドのすぐ真横に飲食可能なクラブハウスがある環境のおかげで、このようなコミュニケーションを取ることができたように感じ、またこのクラブハウスという「ハコ」はクラブのファミリー感を醸成する上で、大きな役割を果たしているようにも感じました。
ここでさらに余談を。
旅程3(オランダ・HGC vs Almere)のAlmereでは試合前に雨が降っていたこともあり、雨よけのあるクラブハウスの2階ベランダで観戦しようと3人で陣取りました。しかし、ここはホームAlmereの熱狂的ファンの定位置だったようで、強面の中年男性たちにジロジロと見られ、「Sushi!」などこちらを牽制するような言葉も聞こえて危険な予感が・・・。これは危険だ、移動しよう。
結局、クラブハウスの反対側にあるスタンドから観戦することにしました。試合中はクラブハウス2階席を中心にホームチームであるAlmereに応援歌やエールが送られており、「あそこにいたら危険だったね」と3人で移動して正解だったことを確認し合ったのでした。このような熱狂的なファンがいるのは、見方によってはそれだけクラブが愛されていることの証拠のようにも感じられたし、応援してもらえる選手にとっては力強い存在となるでしょう。