2024.04.01 22:50 | 海外 | 藤本一平コラム
14歳以下のヨーロッパクラブNo.1を決めるABN AMRO Euro Hockey League U14(以下、EHL U14)は3月31日、決勝戦が行われ、日本人の村瀬咲弥(さや)が主将を務めるSurbiton Hockey Club(イングランド/以下、サービトン)が女子の部で初優勝を果たした。
EHL U14はEHL Ranking Tableの男女上位6カ国から1クラブずつ代表チームが出場する大会。イングランドからはEngland Hockey(イングランドのホッケー競技統括団体)の推薦でサービトンが出場した。大会は6チームが2組に分かれて予選リーグを戦い、各組の1位と2位が準決勝に進出、3位は5位決定戦に進む大会形式。
B組のサービトンは予選リーグ初戦で昨年優勝したオランダのHHV hdmと対戦。接戦をものにして1-0で勝利し、順調なスタートを切る。続く2戦目はベルギーBraxgataと対戦。開始直後に失点を許し、同点に追いついたものの、再度引き離される苦しい試合展開。前半終了間際にペナルティーコーナーを獲得したサービトンは、インジェクターの村瀬からのパスを受けたヒッターの3番Francesca Wealがシュートを決め、同点に追いつく。後半はサービトンが先に2点を奪い、リードを広げ、終盤に失点したものの最終スコアは4-3で勝利。B組首位で予選を通過した。
準決勝は前回大会でも2度顔を合わせたスペインのClub Campo de Madridと対戦。前回大会は予選リーグで0-0の引き分け、3位決定戦は0-0の末にサービトンがSO戦で勝利した。昨年は攻めあぐねたサービトンだが、今回は終始サービトンがボールを支配し、3-0で快勝。昨年の成績を上回る決勝進出を決めた。
勝負の決勝戦。予選リーグで苦しめられたベルギーのBraxgataが、準決勝でA組首位だったドイツのHTC Uhlenhorst Mülheimを3-1で下して勝ち上がり、再戦となった。Braxgataサポーターは発煙筒を焚き、大きなチームフラッグを振りながら大声で応援。対するサービトンもサポーターが「Go!Surbi!」と声を張り上げてチームを鼓舞し、村瀬をはじめ選手たちは物怖じすることなく堂々としたプレーを見せた。
前半はサービトンに2枚のグリーンカードが出され、苦しい時間帯があったが0-0で折り返す。後半3分、サービトンは自陣23m付近でボールを奪うとスピードに乗ったカウンターアタックを見せ、サークル内でパスを受けたFW3番Francesca Wealがプッシュシュートを決めて均衡をこじ開けた。その後も一進一退の攻防が続いたが村瀬を中心にうまくゲームをコントロールし、サービトンが1-0で勝利。イングランドのクラブとして史上初の優勝を果たした。
村瀬は試合後、「勝てて嬉しい。試合前は、相手の16mフリーヒットのときに、前線からプレスをかけて自分たちの右サイドに追い込んで奪う作戦を立てていた。カウンターアタックで得点が取れたのが嬉しい。(去年は3位だったが)今年は金メダルを取れてよかった」とコメント。サービトンのコーチ陣から、今大会もっとも活躍した選手に与えられる「Player of the Weekend」にも選出された村瀬。日本人初の快挙を果たし、金色に輝くメダルとトロフィーを携えながら達成感に満ちた笑顔を見せた。(文・藤本一平)
あとがき
EHL U14では、中学生世代の若い選手たちが国を代表するクラブの一員としてプレーし、ハイレベルな戦いを繰り広げる。(大人の)EHLという世界トップレベルの戦いが行われているピッチのすぐ隣で、アンダー世代の頃から外国のチームと戦う経験は選手たちの大きな財産になり、自信にもつながる。移動がしやすいというヨーロッパの地理的アドバンテージもあるが、このような大会をオーガナイズしている点も、ヨーロッパの国々の強化につながっていると言えるだろう。アジアでは、日本では、どのような取り組みが有効で、どう実現していくか。我々大人世代ができることに思いを馳せつつ、村瀬選手の今後のさらなる活躍に期待したい。